この世の背景

主に、どうしようもないことを書いています。

何故、キラキラネームをつけるのか。

キラキラネームという言葉が出て来て久しい。出て来た頃は、特に気を遣うことも無く、おおっぴらに話題にし、キラキラネーマーを思う存分、心の底から馬鹿にしていたものだ。

 

しかし時は流れ、時代は変わった。今やキラキラネームの話題は、匿名以外では容易には扱えない危険なネタに変わってしまった。自分はそこに気付かず、職場で「○○って名前とか、あり得ないよねー(笑)」などと軽々しく言ったりして、周囲の人間の顔色が突如、死人の様になり、どうしたことかと訝しんでいると、自分のそばにいる上司の子供の名前がまさにその○○だった、という経験がある。いやぁ、血の気って本当に引くもんなんだなぁ。勉強になりました。

 

それにしても、キラキラネームはどうしてこうも流行っている…というか、定着したのか。実に不思議なのだが、自分にはキラキラネーマーに「どうしてそんなに頭の悪そうな名前を付けたんですか?」などと聞く勇気が、残念ながら無い。だからその理由は勝手に想像するしか無いのである。

 

まず理由の1つとして、「聞いたことのある名前が増えた」ということが挙げられるかもしれない。例えば自分の子供に、知人や知人の子供と同じ名前はつけにくい、というのは多くの人間が同意するところだろう。これは別に「名前が同じだと混乱して不便だ」という理由が主ではない。とある名前の人間を知っていると、その名前にその人間の印象がどうしてもついてしまうからである(だから偉人や好きな人物の名前は逆につけたくなる)。

昔は親族や近所の人間だけチェックしとけば良かったのかもしれないが、現在はTVやネットによって「知っている人間の範囲」が非常に広くなってしまったため、そんじょそこらの名前では、すぐに誰かが思い浮かんでそのイメージが重なってしまい、名前がつけにくい、という事情があるのかもしれない。

 

2つ目に、「知っている人間の範囲」が広がったので、「変わった名前を目にすることも増えた」ことも影響していると思われる。例えば、TVやネット、お母さん向けの雑誌をちょっと見てみれば、キラキラし過ぎて発作が起きそうな名前が満載であって、最初は「残念な親のもとに生まれてかわいそうに…。あはは」などと思っていても、長時間見ているとあまりのキラキラぶりに脳が麻痺してきて、次第に「あれ、ココアちゃんって意外とありかな…?」などと感じる様になるのである。

 

3つ目に、昨今の「オンリーワン信仰」も影響しているかもしれない。以前の日本なら「聞いたことも無い名前」は基本的に敬遠されていたと思うのだが、現在の日本では「聞いたことも無い名前=オンリーワン=凄い!!」的な発想で好まれるようになっている可能性が大いにある。

 

(余談ではあるが、「ナンバーワンよりオンリーワン」などという昨今の風潮は、全く浅はかである。そもそも、そこらの河原に無数に転がっている、全く無価値な石ころにだって同じ形のものは一つとして無く、全て「オンリーワン」である。どぶに湧いたボウフラにも、酔っぱらいの吐いたゲロにも、おっさんの脇汗のシミの形にも、一つとして同じものは無く、全て「オンリーワン」である。だからなんなんだ。世界で一つだから何だというんだ、愚か者どもめ。)

 

それと苦し紛れの4つ目は、核家族化によって上の世代の意見が取り入れられにくくなったために、世代間の名前の変化速度(程度)が上がっている、ということもあるのかもしれない。

 

 

まぁ自分に思いつくのはそれくらいである。「聞いたことも無い名前」の説明にはなっているものの、「特殊なセンス」についての説明としては、やや弱いかもしれない。しかしまぁ要するに、キラキラネームをつけることにもそれなりの理由があるわけで、決して親の頭が悪くて悪くてしょうがないからではない、と、言えなくも無い、ということが言いたいのである。

 

 

ちなみに、自分には今年生まれる予定の息子がいる。なかなか良い名前が思い浮かばず、候補の中にややキラった名前が浮かび始めたので、「これは良く無い傾向だ」と、2歳になる娘にも一緒に名前を考えてもらったところ、「大根」「自転車」「ワラビー(小型のカンガルー)」などという、オンリーワンにも関わらず全くキラキラしていない、非常に斬新な名前を提案してくれた。これはイケル!と思ったのだが、何故か全て妻に却下されてしまった。残念でならない。